映画でしか登場しないような大きな部屋は、
まるで秘密基地のようである
そこには、見たこともないような高価そうな機械が並んでいる
偉そうな人たちが数名と召集された数人
ここが本部の中枢となる
私は、サイバーテロ対策本部特別チームに派遣された。
それは、ひとつの犯行声明が送られてきたことからはじまった。
手に乗るくらいの小さな包みでカエル急便と書いてある。
カエル! どこかで聞いたような。
その中は、ビデオテープが入っていた。
サイバーテロ対策チームだったよな・・
今時、なんでビデオメールとか使わないんだろう?
しかもVHSだ。
ネットでは、足がつくということなのか?
しかし、Rディスクやメモリカードでもよさそうなものだ。
送るにしたって、きっと安く送れるだろうに
早速、ビデオを再生してみることに、
そこには、石畳の階段が映しだされている。
日の光が当たっている、たぶん屋外だ
ビデオカメラをもっているらしきその人物は、その階段を勢いよく登りはじめた。
画面には階段しか映っていない。
スタスタと登っていくと、
「あっ。コケタ。」
思わず、つぶやいた
その、こけっぷりたるや、超一流のコメディアンを思わせる
最上級の出来で、吹き出しそうになるも、
周りの真剣な雰囲気を察して、堪えるので精一杯だった
コイツら、一度、見てんな・・
クソー
その瞬間に、カメラの両サイドでいっしょに登っている人物がいることがわかった。
カメラがコケタので前に出てしまったのだ。
ひとりは、ヘルメットにサングラス、ひげをたくわえている。
なぜか右手にはタモを持っている。カメラの方をちらっと見て少し笑っているようだ。
「ミヤカワっ。」
なぜ、その男の名前を知っているのだろう?
もう一人は、長い髪で、体格は、男っぽいのだが、どうも女のようだ。
カメラの前に出てしまった彼女は、慌ててさがった。
「エスミっ」
なぜ、知っているのだろう?
かなりの手ぶれ
ビデオの出来は、とてもプロとは言いがたく
素人が取りましたって映像である
だが、なんか、おもしろい。ユーモアのセンスは抜群といっていい。
最上段までいくと、そこは少し平坦な部分が広がっていて、
奥は、うっそうとした森になっている。
手前に踏み切りがあり、警報機にはスピーカーらしき物がぶら下がっている。
あれだけ階段を登って来たのに電車が通っているというのか?
そんなところは、そう多くはあるまい。
すぐに場所が特定できるのではないか?
いや、これは、高度な偽装なのかもしれない。
と思っていると、何やらカメラを持ったヤツは、自らそこに三脚を立てているようだ。
サイドの二人は、カメラの正面に仁王立ちになった。
必死に笑いをこらえている表情だ。
と、そいつは、画面下からマイクをガサガサとさせながら登場した。
ただ、そいつだけには、モザイクがかかっており、男か女か特定することはできない。
さすがだ。肝心なところはモザイク処理をするなんて・・・。
すると、そいつは、わけのわからないことを喋りだした。
「○△×※・・・」
いったい何だ? 別の国の言葉か? それとも高度な暗号か?
そいつが喋り終わるとミヤカワがタモでスピーカーを回収して、
カメラ前まで近づけ、そのまま真っ暗になった。
カチャ、硬質な物がすれる音。
ブルルルルル・・、バイクが遠ざかる音が聞こえる。
気づくとベットの中だった。
午前5時、新聞の朝刊が届いた音だ。
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